仲間ってなんだろう
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「なあ、正樹君。」
「はい?」
突然仁に名前を呼ばれ、春樹はゆっくり振り返った。
2人は帰るために駅に向かっている最中で、もう終電も近い時間になっていた。
「俺ね、結婚することにしたよ。」
「は!?」
前を歩いていた正樹は驚きのあまり足を止めた。
「結婚!?誰と!」
「瑞希さん。」
立ち止まった正樹を無視してスタスタと追い越しながら仁はふっと笑った。
「瑞希さんって……えええええ!!」
「ははは!そんなリアクションしてくれるんじゃないかって、ずっと楽しみにしてた!」
正樹の反応に仁は腹を抱えて笑った。
「ちょ、僕は2人が知り合いだったってことも今知りましたよ!」
「だって言ってねぇもん。
そうだなぁ、仲良くなったのは沙羅達の撮影が始まってすぐだから、夏ぐらい!」
「結婚って……よくそこまで行きましたよね。」
「まぁ、自分達にしか分からないってもんよ。」
正樹が急いで仁に追いつくと、2人はほんの少しの間黙って歩いた。
「…いつから狙ってたんですか?」
「ん?お前も瑞希さん狙い?」
「いやいや、俺は違いますよ。気になっただけです。」
仁はそれを聞いて少し笑った。
「ずっと、だよ。初めて見たときから。」
「そ、そんなものですか……」
結婚という言葉は、正樹にとっても無関心なものではなかった。
自分ももう20代の後半に入り、既に30代の仁には劣るかもしれないがそれなりに危機感も持っていた。
「まぁ、俺の場合はそうだったってだけで人それぞれだと思うけどな。
めったにこんなチャンスないと思ってぶつかって行ったら、向こうもたまたま同じように感じてくれたってだけ。」
「難しいんですね。」