仲間ってなんだろう
「俺、先輩と出会う前に、事故にあったことがあるんです。その時に右半身が……」
最後まで言葉に出来なかった。
今まで自分が長袖しか着ない理由を遠まわしではあるが何度も仁に聞かれた。
それでも言えなかったのは、この体を見て気味が悪いと思われたくなかったからだ。
仁はそんなことを思う人ではないというのは分かっている。
だけど仁と一緒に仕事をしてきて、その存在は失い難いものになっていた。
仁が自分から離れていくのが怖かった。
「……うん。知ってたよ。」
仁の声に正樹は驚いて顔を上げた。
「え……?」
仁は優しく笑って正樹の肩に手を置いた。
「いつ言ってくれるのかなぁと思ってたんだけどな。
お前と大学で会った時から噂で知ってたんだ。
『あの人かっこいいのに何でいつも長袖なんだ?』っていう疑問から始まった噂。
俺は記者志望だったから、興味半分に調べてみてそれが本当だって分かって。
……すまなかったな。」
「なんで……」
正樹の目が大きくなった。
「なんで先輩が謝るんです?
先輩は俺の相棒なのに、ずっと言えなかった俺の方が悪いのに……」
「辛いんなら言わなくて良かったんだぜ?」
仁は笑って歩き出した。
さっきのパーティーで酒をたらふく飲んだ2人はいつもの2人とはちょっと違っていた。
いつもよりもっとお気楽な今なら、いつも言えないことも言える気がした。
「だけど、俺より先に沙羅に打ち明けたのは結構嫉妬したんだぜ?」
追いついてきた正樹に仁は少し怒ったように言った。