Christmas Rose
ガチャ・・
アリスは誰かに気づかれないよう、こっそりと自分の部屋へ戻った。
そして、奥の隠し部屋へ二人を案内した。
「・・ここなら誰にも見つかりません。」
アリスの言葉に、キースとリエルは驚いた顔をした。
「・・キース様。私に、リエル様とレイド様の結婚を取りやめにする力はありません。。だから、リエル様を連れ去るなんて事はしないで下さい。そんなことをしたら最悪の場合どちらかが命を落としかねない。」
アリスは手をギュッと握りしめた。
双方の国王が取り決めた婚儀に意を反することは許されない。
キースは何も言わずに頷いた。
私に出来ることはこれくらいしかない・・。
最後のお別れをさせてあげるくらいしか・・・。
扉をゆっくとり閉じると、リエルの瞳が目に焼きついた。
微笑んではいるが、悲しいリエルの瞳が・・・。
部屋を出ると、アリスはマグの部屋へ向かった。
「・・アリス様?どうされたんですか。」
「今夜はシドは戻らない。私もここに泊めてほしい。。」
俯いて言うアリスに、マグは何も聞かなかった。
「どうぞ、ゆっくりしていって下さい。」
アリスは窓辺で膝を抱えて夜空を見上げた。
―キース様と結婚するために生きてきた―
リエルの言っていた言葉が耳から離れない。
内容は随分違うが、昔の私のようだとアリスは思った。
アリスも王になるために生きてきた。
それがある日突然国の為、その一言で全てを飲み込み耐えるしかなかった。
どうして女は、国の為
その理由で、自分の進みたい道を勝手に変えられてしまうのだろう
母上も国の為、世継ぎが生めず周りからの批判に気を病んだ。
シドの母上だって・・
「・・大丈夫ですか。アリス様。」
「ねぇマグ。私達王宮の女は自由に生きることは出来ないのかな。」
マグはアリスの言葉に瞳を細めた。
「・・私は、女の身でありながら公務に携わっています。女が政治の場にいることを良く思わない者もいます。両親からは、はやく結婚してほしいと言われています。」
自分の事を滅多に話さないマグに、アリスは振り返った。
「・・でもここで働き続けるのは自由に生きることを諦めたくないからだと思います。女はこう生きなければいけないなんて事は絶対にないと私は思っています。」
アリスはマグの言葉に目を覚まされたような気分になった。
そうだ。諦めてはいけない。
私は、ギルティへ来てからはどこか諦めていた。
女として生きていく自分に、何か出来ることなんてないと決めつけていた。
でも違う。
アリスは今の王宮も事態に、見て見ぬふりしている自分に気がついた。