Christmas Rose
第5話 許されざる血
◆◇◆◇◆◇◆
ダンっ!ダンっ!!!
リエルとレイドの婚儀より数週間。
城内はいつもと変わらぬ日々が流れていた。
季節はすっかり冬となり、朝夕は気温も下がり庭園の草木はすっかり枯れて城へ続く道は赤や黄色の落ち葉で覆われていた。
今日は昼間でも太陽は雲に隠れて冷え込んでいる。
そんな中、城の闘技場で木刀が打つかり合う音が響いた。
「・・ゼノ、なかなかいい腕だな・・!」
シドはゼノと手合わせしていた。
普段から表情の少ないゼノだが、涼しげな顔でシドの攻撃を交わしている。
「・・お褒め頂き光栄です。」
ザンッ!!!
ゼノがシドの木刀を振り払った。
「おっと・・!」
シドも素早く攻撃を受け止める。
「・・はぁ、はぁ・・久しぶりに本気を出したよ」
二人はその場に座り込んだ。
「・・・この後の公務はきっちり行って貰いますよ」
ゼノはそう言うと立ち上がり先に城へと戻って行った。
「相変わらず愛想のない奴だ」
シドはごろんと寝ころんだ。
分厚い雲で覆われた空を見上げた。
こんな風に本気で剣を握ったのは久しぶりだった。
シドはふっと昔、幼いアリスが真剣で練習をしている姿を思いだした。
「・・・誰だ。」
背後から、何者かの視線を感じた。
シドは起き上がり、振り返って言った。
カサっ・・
すると、レイドが姿を現した。
「・・何か用か。」
シドは立ち上がると、レイドを真っすぐ見て言った。
レイドは何も言わずに、手に持っている真剣をシドに差し出した。
「・・ふっ、何の真似だ。」
「兄上、手合わせ願います。」
シドは何も言わずにじっとレイドを見つめた。
城の近衛兵達の間で年に二度行われる剣術大会でも真剣は使用しない。
一体どうやって用意したのか・・。
レイドから剣を受け取ると、冷たい風が闘技場へ吹き込んだ。
キィン!!!
レイドは容赦なくシドに斬りかかった。
受け止めるが、それなりの力にシドはふっと微笑んだ。
「実の兄に対して真剣を振るうとは。」
レイドはその言葉に一瞬表情が曇った。
キィンっ!!!
レイドの剣を振り払うと、今度はシドが攻め込んだ。
隙のない突きにレイドは受けるので精いっぱいだ。
ザンッ!!!
シドの剣はレイドの胸元を掠めた。
すると、シャツのボタンが取れて地面に落ちた。
キラッ・・
レイドの胸元が開き、何か銀色の物が光った。
十字架・・・?
レイドは胸元を手で隠した。