Christmas Rose
その夜、部屋の窓辺でアリスはマグから借りた本を読んでいた。

キリのいいところまで読み終えると本を閉じた。

そして、ふとリエルの事が頭に浮かんだ。

リエルの部屋はここから少し離れており、夜会や音楽会でもない限り顔を合わせる事は殆どない。

初めてギルティへ嫁いで来た時、とても不安だった事を思い返すと、リエルは大丈夫かとつい気になってしまう。

「ハァ…」

そんな事を考えているとつい大きな溜息が漏れてしまった。


「どうかしたのか?」

突然背後から声が聞こえた。

振り返ると、シドが部屋へ入ってきた。


「シド。今日は早かったね。」


シドはアリスに近づくと、そのまま自分の方へ引き寄せた。


すっぽりとシドの胸におさまった。


「・・シド?」


「悪い。少しだけ、このまま。」


少し掠れた声で呟き、アリスを抱きしめた。



アリスもシドの背中に腕を回した。


不思議…


シドの事、こんな風に愛おしく想う日が訪れるなんて…
< 139 / 190 >

この作品をシェア

pagetop