Christmas Rose
アリスは部屋に戻ると、ベッドに寝るむリエルを見た。
「…落ち着いて、眠っておられます。」
「分かった。今度は私が観ているから、マグも少し休んで」
アリスは椅子に腰掛けた。
今リエルを一人にするのは危険だ。
再び自らを傷つけてしまうかもしれない。。
「…シドの叔母上のシャーリーン様がお見えになってる。」
アリスの言葉にマグは驚いた。
「本当ですか?シャーリーン様に私はお会いした事はありませんが、お話はよく耳にします。とてもご立派なお方だと。」
「ええ。今夜お会いしてゆっくり話す予定です。シドが話してくれたが、なんだか私と似た境遇のお方だ。」
***
夜になり、夕食を済ませた後アリスはシド共にシャーリーンの元へ向かった。
部屋に入ると、美しい音色が聴こえてきた。
窓際でシャーリーンがハープを奏でていた。
とても美しい音だった。
アリスは瞳を閉じてシャーリーンの演奏を聴いた。
二人に気がつくと優しく微笑んだ。
「…ハープは私が嫁いだ国で良く演奏されていたんです。」
シャーリーンの執事がお茶を出した。
「…時間を作ってもらい申し訳ない。こうして二人とゆっくりはなしがしたかったんです。」
シャーリーンはお茶を一口飲んで言った。
「…この国の事は嫁いだ後も、このフランに命じ都度報告させていました。エレーナ様が戻った事も聞きました。そして、今レイドと王位争いをしている事も。」
シャーリーンは表情を歪めた。
「…王がこんな事態の時に、王位を争っている場合ではないのに、私の落ち度です。」
シドは拳を握りしめて言った。
「…明日、王の快気祝いと私のために王族や貴族を招いた小さな晩餐会が開かれます。そこで、この揉め事を片付けるのです。この国の時期国王はシド、貴方です。」
シドは顔を上げた。
シャーリーンはまっすぐシドを見つめて頷いた。
そして、次にアリスに視線を向けた。
「アリス様、貴方の話もよく耳にしますよ。女であるのに、アステルの国王になるべく生きてきたとても芯のある方だと。」
シャーリーンの言葉にアリスは首を振った。
「…私は、母国でも結局王になる事は出来ず、ギルティでも何のお役にも立てていません」
沈みがちな声で答えるアリスをシャーリーンはジッと見つめた。
「…王子を支える王太子妃と言うのは、とても辛い立場です。私も、かつては王になる覚悟をしていましたが、他国へ嫁ぎました。貴方の気持ちはきっと誰よりも理解出来る。貴方は今までよく頑張ってきました」