Christmas Rose
「……んっ、」
眼が覚め起き上がると、頬が涙で濡れていた。
アリスは手で涙を拭った。
どうして、あの頃の夢なんか見たんだろう……
ふと、窓の外を見るともう朝だった。
窓から差し込む日差しを見ると、アリスは途端にハッとした。
「…そうだ、私昨日シドのことを待って居たんだ…」
シドが来る前に眠ってしまった。
アリスは大きな溜息をついた。
ベッドから降りるとそーっと部屋の外に出た。
まだ早朝。
マリア夫人も起きていないようだ。
誰かに気付かれないように中庭へ出た。
朝露がキラキラと陽の光を浴びて輝いている。
庭に咲く花を積もうと、手を差し伸べた時、
「…よく眠れたか?」
振り返るとシドの姿が。
「シ、シド……!」
シドはふぁっと欠伸をしながら言った。
「ごめんなさい。昨日…」
「ああ、いい。俺も戻るのが遅かった。」
シドは昨日、アリスが部屋に戻る前もたくさんの貴族たちの相手をしていた。
大国の王子は大変だなぁ…
そんな事を思っていると、シドはしゃがんでアリスがつもうとしていた花に手を伸ばした。
そして、アリスに差し出した。
「薔薇は我が国の国花だ。見た目は美しいが棘がある。素手で触るのは危ない。」
そう言われて、アリスはそっと薔薇を受け取った。
いい香り…
「ありがとう。」
アリスが微笑んでお礼を言うと、シドはパッと視線を外した。
「…今日は、確か音楽会があったな。」
「そう言えばマリア夫人が昨日言ってたわ。音楽会って何をするの?」
「アリスの国では音楽会は無かったのか?」
音楽会…
あったのかもしれないが、そういうものには一切参加していなかった。
「…退屈なもんさ。剣を振りましてたお姫様には特にな。」
「その話はもうしないで…」
シドはそっぽを向くアリスを見てふっと笑った。