Christmas Rose

朝食を済ませドレスに着替えると、アリスはシドに貰った薔薇を花瓶にさした。

この国の国花か…

薔薇を眺めていると、マリア夫人がやって来た。

「アリス様、そろそろ音楽会の時間です。」

音楽会の会場となるホールの前に行くと、シドが待っていた。

差し出された手にそっと自分の手を添えた。

ホールへ入ると既に招かれた貴族達が待っていた。

アリスとシドが現れると、皆の視線が一気に向けられた。

音楽会が始まり、ホールには美しい音色が響き渡った。

皆それぞれ目の前で披露される演奏を聴いたり、談笑したりと自由な時間が流れていく。

シドは部屋に入るなり、身分の高い伯爵達に囲まれている。

すると、マリア夫人が近寄ってきてそっとアリスに耳打ちした。

「…貴族の方達にお声をかけてあげてください。宮廷内では、女性の中で一番身分の高いアリス様には自分から声はかけられないんです。」

そんな面倒な仕来りがあるなんて。


アリスは溜息をついて仕方なく近くで固まっている夫人達の元へ向かった。




< 29 / 190 >

この作品をシェア

pagetop