Christmas Rose
「…国王様、一体なんのお話があるんでしょうね?」
「…分からない。」
アリスの後を歩くのは、二つ年下のレオ。王室騎士団員に3ヶ月前に入隊したばかりだ。
レオはアリスの乳母の孫で、幼い頃から共に剣を習い兄弟のように育ってきた。
アリスは中庭の噴水に腰掛けた。
「アリス様、フィオナ様が。」
レオの言葉にアリスは顔を上げた。
少し先にあるバルコニーで本を読んでいる姉のフィオナの姿が見えた。
アリスは、フィオナの元へ走った。
「姉上。」
「…アリス。」
アリスを見上げると、フィオナは読んでいた本を閉じて優しく微笑んだ。
「姉上、外に出て大丈夫ですか?」
「ええ。今日は身体の調子がいいの。」
この国の第一王女であるフィオナは、昔から身体が弱い。
数日前に風邪を引いてしまい、部屋から出られる容体ではなかったが、今日のフィオナは顔色もいいようだ
「アリス、血が出ているわ…」
フィオナは剣で切れたアリスの手をそっと握った。
「ああ、これくらい平気です。」
「アリス…ごめんなさいね。あなたにこんな真似をさせてしまって…」
フィオナの表情が曇った。
アリスは膝を付き、フィオナの手を握りしめた。
「姉上。そんな事お気になさらないでと何度も言っています。姉上は安心して、私にこの国を任せてください。」
「アリス……」
傷だらけのアリスの手のひらを握りしめながら、フィオナは表情を歪めた。