Christmas Rose
それからというもの、城ではシドとマルヴィナの噂話で持ちきりだった。

お茶会、舞踏会、サロン。

何処へ行ってもあっちでヒソヒソ
こっちでヒソヒソ

噂話は根も葉もない事までどんどん膨れ上がり、ついにはマルヴィナが身籠ったなどと言う話まで広がっていた。

依然としてとして夜は帰って来ないシド。

世継ぎの問題はあるが、今のアリスにはどうすることも出来ない。

エドに言われた通り、いつも通りの心持ちで過ごそうと決めていた。


暖かい日差しが気持ちのいい午後。

アリスはマグの仕事部屋で本を読んでいた。

部屋にいては叔母上達からお茶会に誘われシドとマルヴィナの事を追求されるだろう。

ここが、この城の中で唯一落ち着ける場所になっていた。

本を閉じて大きく伸びをした。

「…お茶を淹れます。」

マグはティーポットを戸棚から取り出した。

すると、少しだけ開いた扉の外から女性達の話し声が聞こえてきた。


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