Christmas Rose
「…私はここで首を長くしてルイ様のお帰りを待つことにいたします。」
そう話すメアリーに、アリスも頷いた。
ーー
「…そうか、ルイが留学へ」
その夜、公務から戻ったシドに二人のことを話した。
「…メアリーは、身分関係なく愛してくれるルイ様だからこそ、待っていると言ったんでしょう。」
シドは黙って腕を組みベッドに腰を下ろした。
なにやら難しそうな顔をするシドをアリスは不思議に思い覗き込んだ。
「…あいつ、俺が言ったことを真似したんだな。」
「はい…?」
「言ってやったではないか。身分なんか関係ない、愛を貫け!と」
思い返せば、確かにそんなようなことを助言していたような…
「…ルイ様は、あなたの言葉にそそのかされたのではなく、ご自分でお考えになってメアリーに伝えたんです!」
「…いや、俺のお陰だな。あいつ、格好をつけおって…」
「…違います!そんな事を言うと張っ倒しますよ!」
アリスはふざけて言うシドに向かって怒鳴りつけた。
「…ははっ、そんなか細い腕でどうやって張っ倒すと言うのだ。」
「私は、これでも剣術を学んだ身。あなたなんかなんてことなく…」
パシッ
シドがアリスの腕を掴んだ。
グイッ…
グイグイッ…
お、おかしいな…
シドの手が振り払えない。
ここに来てから、剣は疎か身体を動かすと言ってもこの広い城内を歩くだけ。
すっかり身体が鈍ってしまったようだ。