Christmas Rose
暫く静かな沈黙が続いた。


夜風で木の葉が暗い闇の中へ舞っていく。

「…すまない。見ず知らずのあなたに、突然こんな話。」


アリスは涙を拭って立ち上がった。


・・・どうかしてるな。他国の青年に、こんな話をして…


「私が、話してくださいと言ったんです。」


男は優しく微笑んだ。


アリスはその表情に、長年胸につかえていた物が少しだけ緩んだ気がした。


「あなは外国から来たと言いましたね。私も、もうすぐこの国を去ることになる。生まれてから一度も他国へは行ったことがないんだ。」


カイルの王子は、幼い頃から留学して他の国の事もよく知っているそうだ。


私なんかより、ずっと王に相応しい。



「…ギルティは良い国だろうか。」


「ええ・・きっと。」



アリスは馬に跨った。


「…ありがとう。話したら少しだけ楽になったようだ。」


「いえ…私は何も。」


男も立ち上がり、長いローブを羽織った。


また違う国へ旅に出るのだろうか。


「…良い旅を。」


そう言って、馬を走らせた。
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