Christmas Rose
雪が積もり始めた庭園にアリスは出た。
白い息が夜の闇に溶けていく。
辺りは雪のせいで異常なほどに静まりかえっていた。
アリスは厚い雲に覆われた空を見上げた。
そしてシドに言われた言葉を思い返した。
それにしても、馬鹿な自分に呆れてしまう。
いくら母国とはいえ、私は今はこの国の王太子妃だ。
さっきは我を忘れ、自分の国を守らなければと思ってしまった。
それに、考えてみればアステルにはレオがいる。
もし万が一何か起こったとしたら、何らかの方法でレオは私に知らせてくるに違いない。
アリスは暫く庭園で外を眺めていた。
部屋に戻ると、シドがすっかり冷えたアリスを抱き寄せた。
「大丈夫か?」
「はい…」
身体を離すとシドは優しく微笑んだ。
「私の騎士団員を何人かアステルに送ろう。ルイと合流させ探りを入れる。大丈夫だ。」
シドの言葉にアリスはありがとうと小さな声で言った。