Christmas Rose
「…アリス様のお越しです!」
「アリス様のお越しです!」
突然のアリスの登場に、城内は大騒ぎだった。
久しぶりの母国。
16年間慣れ親しんだ、王宮…
「…アリスが…?」
側近の言葉に、ソフィアは表情を変えた。
コンコン
ドアがノックされた。
数ヶ月ぶりの、姉妹の再会だった。
アリスはローブを外すと、アランの前に歩み寄った。
この方が、姉上の…
アリスはドレスの裾を持ち上げると、深々とお辞儀をした。
「…アラン国王。お初にお目にかかります。ギルティ国王王太子妃 アリスと申します。」
アリスは顔を上げると、ゆっくりと視線をソフィアへ向けた。
「…姉上。今日は姉上にお願いを申し上げに参りました。お願い致します。どうか、アラン様を国民の前にお出し下さい。どうか、今までアステルが築いた国民との絆を絶たれませんように…」
「…ふっ」
アリスの言葉にソフィアから笑みが溢れた。
「…まるで、自分が築き上げてきたような言い方ですね…」
姉上…
「貴方に言われる筋合いは…ゴホゴホッ!!」
突然ソフィアは咳き込み、胸を押さえてその場に座り込んだ。
「姉上っ!!」
「来ないで!!!」
ソフィアの言葉にアリスの足が止まった。
「…来ないで…!アリス…貴方は昔から自分一人が全てを背負っているかのように…自分だけが辛い目に合っていると…ゴホゴホッ!」
アランが慌ててソフィアの身体を支えた。
「…私の方が…!自分の身体の弱さを憎んだ…貴方よりも、みんなの視線が辛かった…貴方より何倍も何倍も苦しんだのに…!アランはよく尽くしてくれているわ。やっと結婚が叶い、アステルへやって来てくれたのに…こんなに頑張ってくれているのに、まだ国民が貴方のことを支持するなんて…!!!」
ソフィアの叫びに、アリスは言葉が出なかった。
姉上が、そんな風に思っていたなんて…
ガチャッ
ドアが勢いよく開くと、そこには車椅子に乗った父とその隣には母の姿があった。
アリスを見る二人はとても驚いた。
「…ソフィア!」
母はソフィアへ駆け寄った。
横を通り過ぎる母の姿に、アリスは思い出した。
そうだ、母は私を愛していなかった…
「…お帰り下さい。」
母の冷たく言い放つ言葉が部屋に響いた。
「…貴方は他国へ嫁いだ身。いくら母国といえど、ここは貴方が来ていいところではありません。いくら私と貴方に血の繋がりがあろうとも、貴方はもう私の子供ではありません。赤の他人です。」