ガーデン・クロニクル~ゼロ歳からの冒険譚~
中学二年生になって、担任になったのは若い男の先生だった。
生徒から人気で、爽やかで。
暗くて引っ込み思案な私とは、正反対の人だ。
私の担任になったことに、疎ましさを感じていそうな人だ。いや、それは私の被害妄想だと思うけど。
「先生、プリント集めました」
今日も、できるだけ目を合わせないようにしながら、集めたプリントを先生に渡す。
本当は他の人の仕事だけど、雑用は殆ど私に押し付けられる。
なんで皆は、そんなに簡単に人の目を見れるんだろうか。
私なんて、目を合わせられただけで体がすくんで、理不尽な命令に逆らえなくなるのに。
「いつもありがとね」
「……はい」
用を済ませて、さっさと帰ろうとした時、それが目に入った。
「あっ……」
「あぁ、これ?」
先生の机の上に置いてあった、手のひらに乗るくらい小さな人形。
黒い髪に、青い瞳の、本当に可愛い人形。
「この前、妹が誕生日だったからプレゼントしようと思ったんだけど、父親も同じ物を用意しててさ。だから、行く宛が無くなっちゃって」
「……可愛いですね」
「でしょう?ただ、俺の机に置いとくのもね」
そう言うと先生は、人形を私に差し出した。