年下わんこに要注意
俺の両親、兄弟はそういった物は視えない普通の人達だ。
母親の実家は寺で、唯一家族の理解者は俺の祖父だった。
祖父も昔から視える側の人間だったと言っていた。
最初は両親も俺の言う事を全く信じてくれず、自分を否定された気持ちで過ごしていたが、ある日祖父の寺に遊びに行った際、木の下にいる幽霊に怯えていた俺に「遥人も視えるんだろ。」と言ったのだ。
「……おじいちゃんは信じてくれるの?」
「勿論だよ。おじいちゃんにも見えているからね。」
「…本当に?じゃあ、あの木の下にいる女の人は視える?」
「…青い服を着ているね。あの人はただあの木が好きなんだよ。」
「悪い事してくるのもいる。あの人はどっち?分からないよ…。」
「そんな時には、寺か神社に逃げなさい。きちんとしている所ならそいつらは入って来れない。遥人に手を出せなくなるから大丈夫さ。」
祖父の言葉は俺の支えだった。
唯一の理解者が居てくれたことに、俺は救われていたが、その時の祖父の守護霊の光は今にも消えそうだった事を覚えている。
それから間もなくして祖父は亡くなってしまった。
もっと色々聞きたいことはあったが、祖父も自分で乗り越えてきたから遥人も大丈夫だと言ってくれていた。
俺もきっと乗り越えていけるだろうと、それ以降どうにか悪い霊には気を付ける日々を送っていたのだ。
今ではもう視える生活に慣れてしまっている。