年下わんこに要注意
昔の記憶を思い出しながら微睡んでいると、隣で寝ている彼女が寝ぼけながら俺に擦り寄ってきた。
朝日がカーテンの隙間から射し込んでいて眩しいのだろう。
ヨダレを垂らしている姿さえ、愛おしい。
こんなに穏やかで優しい気持ちを教えてくれたのは彼女だけだ。
彼女を手離したくない。
ぎゅーっと強く抱きしめると、苦しそうに彼女は目覚める。
彼女を起こしたい時はこうすれば大抵目を覚ましてくれることに最近気付いたので癖になってしまっていた。
そして覚醒していない彼女は話しかけるととても面白いのだ。
「……いた…い。……はる…くん?」
まだ半分以上眠ってぼんやりしている彼女に興味本位で聞いてみた。
今なら冗談だと思ってくれるだろう。
「ねぇ…ゆいちゃんは、俺が幽霊が視えるって言ったらどうする?」
「……幽霊…?はるくん、幽霊視えるんだ…すごいね。」
むにゃむにゃしながらも答えてくれる。
相変わらず可愛い。
すぐに否定せず、俺の話を受け入れてくれる所も本当に大好きだ。
「…視えるだけじゃなくて、ついてこられることもあるよ。昔はよく家の中までついてこられてたし。」
「………家まで……苦労してるんだね……。」
「……苦労、なのかもね。」
「……イケメンは幽霊にもストーカーされるとか、モテモテですな………。…自慢?」
「…………。」
今、彼女は何と言ったのだろうか。
いきなり突拍子もない答えが返ってきて一時停止してしまった。
幽霊にもモテモテ…
ストーカー……
「…ククッ……ハハハッ」
思わず笑ってしまった。
「……結菜、最高かよ。」