年下わんこに要注意
そんなこんなでお昼休みも終わり、デスクに戻ると高木くんはすでに午後の仕事に取り掛かっていた。
「高木くん、お昼休みに凄く話題になってたけど大丈夫?」
「あー。そうなんですね。まぁ僕は注目されやすい体質みたいなんで慣れてます。それよりも原谷さんが注目される事に慣れてないので少し可哀想ではありますね。」
「私、高木くんはてっきり社内恋愛しない主義なのかと思ってたからびっくりしちゃった。」
高木くんは私の言葉にクスッと笑みを漏らした。
「僕、相澤さんからそんな風に思われてたんですね。確かに社内で恋人を作るのは抵抗があったんですけど……、運命の人に出会ってしまったので人生何が起こるか分からないです。」
にっこり笑顔でさらっととんでもない発言を聞いた気がするが幻聴では無さそうだ。
近くで聞き耳を立てていただろう女性社員達数名の呻き声が聞こえたが、こちらは幻聴だと思うことにする。
結婚が決まったばかりで浮かれているのかと思われそうな発言だが、これはきっと男性社員への牽制だろう。
お相手の原谷さんも目立つタイプではないが密かに男性社員から人気があったようだし、朝からテンションが下がっているのが女性社員だけではなかった事を高木くんも分かっているのだろう。
まぁ相手がこの髙木くんなら勝ち目なしである事は牽制せずとも明白とは思うが。
彼は自分の容姿の良さは自覚しているのだろうが鼻にかけることなく飄々としているし、人当たりも良い。
仕事も慣れないうちは謙虚に取り組み、慣れた今となってはスマートに進めていく爽やかさまで持ち合わせている。
噂ではあの日本最難関大学を卒業しているらしいし。
なかなかのハイスペック社員である。
どうして我社のような中小企業に入社したのかは未だに謎だ。
ここまでくると何かとんでもない欠点の1つでも持っていて欲しいくらいだ。