大事なことは、二度も言わない
ふたつのサプライズ
 



「森川今暇だろ。 飯行くから支度して」



そんな彼の唐突な鶴の一声で外出が決まったのは、12月24日、クリスマスイブの夕方過ぎ。
いきなり電話がかかってきたと思えば、一方的に待ち合わせの時間と場所を告げられ通話を切られた。

私はといえば、どこかの誰かさんからいつ呼び出しがかかってもいいように他の誘いをすべて断り予定はガラ空きにしていたものの、時間的に今日はもうないな、と半分不貞腐れてぼっちクリスマスを迎えようとしていたところだった。


やっときた!
でも遅いな!
これは人によっては完全なるアウト……!


わかっちゃいたけど、今回はまたえらく動きが鈍い。
この時間から予約なしで行くとなると、適当な居酒屋か、良くて駅近の安いイタリアンか……。

実はクリスマスに着れたらいいな、くらいの気持ちでこっそりおしゃれワンピースを買ってみたりしていたけれど、残念ながら今日は出番はなさそうだ。


タートルネックのセーターにスキニーパンツを合わせ、待ち時間対策にニット帽を装備。そしてダウンコートの上からマフラーをぐるぐる巻き。
メイクも合わせて所要時間20分。優秀。


……そして、


(これは、渡せそうだったら渡そう)


家を出る前にクローゼットから取り出したのは、リボンで飾られた小さな包み。

1ヶ月前から用意していたそれを忘れずにバッグの中へ忍ばせて、すっかり日も暮れた寒空の下、私はいそいそと待ち合わせ場所へと向かった。


 
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop