way of life
「いえ。ここにいるはずです。調べはついています」
「それは、私の言葉を疑うという事か?言葉を慎めよ、プリンセス。我がヘルスター王国とエスターンは敵対国。言わば敵地だ。そこでの言動は、慎重にするべきではないか?」
「私は、エスターンのプリンセスとして。エスターンの代表として今、ここにいます」
「それは、争いも辞さないという事か」
脅すような強い口調。
梨乃はまっすぐ国王を見つめる。
声が震えないように。
強く、まっすぐな毅然とした態度で。
「カノンは、我が国の大切な家族です。彼を救うために必要ならば。ですが、私は無駄な争いは好みません。どうか、穏便に事を解決したいと思っています」
「たかだか庭師一匹、いなくなったところでなにが困る?必要とする場所に戻った方が価値はあると思わないか?」
「それは、国王様の隠し子だと言われているからですか。あなたにとっては、たかが庭師と思われるかもしれませんが。私たちにとっては、家族同然なのです。家族の幸せを望むのは当然のことでしょう」
考え方の違い。
使用人をたかが、という言葉で片付けるダーク国王の考えは梨乃には理解できなかった。
同じ命。
命の重みは、皆同じなのに。
「彼自身が、望むなら私たちは何も申しはしません。しかし、今回の件、これはカノンの想いを無視した、ただの誘拐です」
「想い?そんなもの、どうしてわかる。父と子が共に生きることを咎めるというのか?」