way of life


よく晴れた日。
梨乃の正式な婚約発表が行われることになった。


候補として共にパーティーに挑んだあの日からずいぶんと日にちが経ち、いよいよ周りがせっついてくるようになったからだった。


梨乃の婚約の背景には、ヘルスター王国との抗争により不安定になっていた国を建てなおすという名目のために取り決められたものだった。
それが、ヘルスター王国との関係の解消により、解消になるかと思われたが、そうでなくとも、次期国王として早いうちに誰かを示す必要があるのではないかという上層部での声にそれも叶わないこととなった。



梨乃も、一通りの流れを聞いたうえでそれを受け入れると覚悟を決めその日のために用意されたドレスに袖を通した。





「お綺麗です、プリンセス!」

「ありがとう」




萎縮してしまいそうなほどの豪華な装飾のドレスに、劣らぬ笑顔で梨乃は笑った。





「シドに・・・会えたらよかったな・・・」



結局、一度も会う事が出来なかった。
梨乃はそのことだけが心残りだった。




< 411 / 507 >

この作品をシェア

pagetop