way of life
ずっと自分が暮らしてきた家。
そこに、客として招き入れられる。
梨乃は複雑な思いのまま促されるままに中に入るとリビングに通された。
「お茶、用意しますから少し待っていてね」
「あ、あの、お構いなく・・・」
「いいのよ。若いお客様なんて久しく来ていないんだから嬉しいの」
キッチンに向かっていく背中を梨乃は見つめる。
戻りたいと思っていた時もあった。
あの世界で生きると決めてからも、この世界の事は忘れたことなんてなかった。
それでも、現実はこんなにも残酷で。
ここで生きてきた軌跡はなにもなくなってしまった。
母親の中に、自分の記憶は少しも残されていないのだと・・・。
「・・・目の当たりにすると、やっぱ辛いな・・・」
吐き出すように呟くと嘲笑し、俯いた。