でこぼこ道
出会い
≪真帆side≫

ジリリリリリリリリリリ!!!
「んもぉー!眠いって!静かにして!!」
今日から新学期。
朝から目覚まし時計にキレているのは私。
小嶋真帆(こしま まほ)。13歳。中学2年生。
好きな人もいないし趣味もない。
こう見えてもバレーボール部のエース。
「真帆っ!!いい加減起きなさい!!」
リビングから雷を落としてくるのはお母さん。
「…はぁーい。」
これ以上黙ってるとさらに雷が落ちてきそうだからとりあえず返事する。
「はぁ…。全くなんで真帆は中2になってもこうなのかなぁ…」
お母さんの声を聞きながら時計を見ると家を出るまであと20分!
焦ってリビングに向かい用意に取りかかる。
……こういうときに限って前髪がはねてるし!
(ピンポーン)
制服に着替えている途中でインターホンがなった。
「はーい!」
お母さんが応える。
「真帆ちゃんいますか?」
親友の声が聞こえてくる。
「ちょっと待ってね、ごめんね。」
お母さんの優しい声はすぐに鬼に変わる。
「真帆っ!!まだ用意できてないの?!早くしなさい!」
……大人って裏表激しすぎるよ。
……なんだこの変わり様。
そんなことを考えながらバッグを手に取り玄関にダッシュ。
靴に足をねじ込む。
「いってらっしゃい。忘れ物ない?」
「ないよ、大丈夫。いってきます!」
(ガチャン。)
家のドアが閉まる。
この音嫌いだなぁ。
学校に行かなくちゃいけない音に聞こえる。
「真帆、おはよう。」
「おはようー!待たせてごめんね。」
「いや、もう慣れたよ。」
そう言って呆れた様に笑うこの子は親友で幼馴染みのさくら。
美術部。よく賞をとって表彰されている。
不思議ちゃんで何考えてるか分からない。
でも、本当はとても優しい子。
ちょっと感情表現が苦手なだけ。
さくらとはこんなにも正反対なのになぜか気が合う。
これが幼馴染みってやつなのかな。
「今日、クラス発表あるね!」
「うん。まぁ、変わらなくていいけどね。」
「わかる!1年生のままでいいよね。」
そんなことを話しながら学校へ向かって歩いて行く私たち。
……今日も平和だなぁ。
学校に着くと校門横の大きな桜の木に小さくてかわいい花が満開に咲いている。
グラウンドには人だかり。
……あそこに新しいクラスが掲示されてるんだな。
ドキドキしてきた。
みんなが教室に入っていくと同時に私たちはグラウンドへクラスを見に行く。
「私4組だー!さくらは?」
「2組。」
「そっか、クラスは違うけど2年生も仲良くしてね!」
「うん、もちろん。」
……やっぱりさくらは優しいなぁ。
なんてことを考えながらさくらに手を振り、新しい教室に入った。
「真帆ちゃん、おはよう。」
「おはよう。」
ありきたりな言葉を交わしながら自分の席を探す。
小嶋真帆…小嶋真帆…あった、やった!1番後ろ~♪
私が席に着くと、すぐに担任の先生が入ってきた。
「1年間この2年4組の担任をさせていただくことになりました、小川です。いきなりですが、今から始業式です。廊下に出席順に整列してください。」
……始業式かぁ…校長先生、話短めでお願い!
そんな叶うはずのないことを願いながら体育館に入り、整列を終えると、すぐに始業式が始まった。
「ただいまより始業式を始めます。まず初めに校長先生のお話です。」
……短いかな?長いかな?
「桜が咲き誇る季節になり…~…えー、ということで、今年度も意味のある1年間にしましょう。これで私の話を終わります。」
……やっぱり長かった…。
「続いて、転入生の紹介をします。」
……転入生かわいそうに。
……私、別の学校に入るなんて絶対に嫌だよ。
「楠田和弥です。よろしくお願いします。」
……くすだかずや…男子か、私には関係ないかなぁ。
「楠田君には2年4組に入ってもらいます。」
……まさかの同じクラス!
「それでは全員教室に戻ってください。」
教頭先生の合図で教室に戻る。
……今気づいたけど、私、朝練終わってボール持って帰ってきたっけ…?
……まぁ、いいか!あとで確認しに行こーっと!
教室に戻ると1人1人の自己紹介が始まった。
ちょっと寝ちゃって、気がつくと私の番だった。
……明日からはさくらの言う通り夜ふかしはやめよう…
「小嶋真帆です。1年2組でした。バレーボール部です。風紀委員やってます。1年間よろしくお願いします。」
……こんなもんでいいでしょ!さすが私…!
……それにしても春ってほんとに気持ちいいね。
……ポカポカして、また眠たくなってきた…ふわぁあ…むにゃむにゃ…。
はっと起きるともう下校時間が近くなって、教室には誰もいなかった。
寝ぼけたまま体育館に向かい、ボールを探す。
……あった!
……でもなんで?私でもこんなに目立つところにあったら気づくと思うんだけどな…。
……ん?下になにか置いてある。手紙…?
『舞台裏に忘れてましたよ。わかりやすいようにここに置いておきますね。楠田和弥』
丁寧な字がノートの切れ端に綴られていた。
……楠田…和弥…?…同じクラスの転入生か!!

……優しい人だな。明日話せるといいなぁ、楠田和弥くん。
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