でこぼこ道
≪和弥side≫
今日は珍しく早く起きた。
俺は、楠田和弥(くすだ かずや)。
13歳。中学2年生。野球部。
昨日この大都会に引っ越してきた。
カーテンを開けて外を見ると大きなビルがいくつも立ち並んでいる。
前に住んでたところはここと同じ国か疑うくらい田舎で、電車も1時間に1本しか来ないし、遊ぶところと言ったらどこまでも続くような広い広い公園ぐらいだった。
それに比べてさすが都会。
電車もたくさん来るし、何より人が多すぎる。
右向いて人、左向いても人。
……こんな180度違うところで生活できるのかな…。でも、楽しみだな。
そんな不安と期待を抱え、新しいリビングで母さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながらトーストをかじる。
いつもと変わらない朝ごはんだけど、なんとなくおしゃれな気がする。
これからこんな毎日が続くと思うと朝起きるのも嫌じゃない。
顔を洗い、真新しい学ランに手を通すとなんとなくしゃきっとした気持ちになってきた。
母さんもきれいな服に着替えて気合い入れて化粧もしている。
俺より母さんの方が主役みたいだ。
「和弥ー!学校行くよ!」
「わかった。」
ドアを開けるといろんな匂いが俺の鼻先をくすぐる。
コーヒー、柔軟剤、甘いはちみつ…
……幸せな匂いだなぁ。
いろいろと考えながら歩いていると大きな中学校の校舎が見えてきた。
校門の横の力強い桜の木には、薄桃色の小さな花が咲き誇っている。
トラック1周300メートル以上ありそうなグラウンドもきれいに整備されていて、その端には人だかりができている。
俺は、人だかりがなくなってから母さんとクラスを確認しに行った。
……5組?!ひとつの学年にクラスってこんなにあるんだ…。俺は…2年4組か。今まで1組しかなかったから新鮮な気分。
どこからか湧いてくる、嬉しいような楽しいような言葉では上手に言い表せない気分に浸っていると、若い男の人が走ってきた。
「転入生の楠田さんですか?私、和弥君の担任をさせていただく小川です。」
……えっ?この人先生?!若すぎるだろ!
母さんと別れ、先生について行くと体育館に案内された。
「うわっ!」
体育館の舞台裏、暗闇の中でなにかを蹴飛ばした。
……ん?バレーボール…?名前が書いてある。『小嶋真帆』…?バレーボール部の人か?ボール置いて帰るとかどれだけドジなんだよ…。
でも、このバレーボールのおかげで緊張がほぐれた。
挨拶も上手くいきそうな気がしてきた。
……このボールわかりやすいところに置いておこう。…でも、もしここにわざと置いて行ったならすごい迷惑だよな…。誤解されないように手紙書こう。…ノートしかないじゃん、俺のカバンの中。仕方ない。端っこちぎって書けばわかってくれるかな?
『舞台裏に忘れてましたよ。わかりやすいようにここに置いておきますね。楠田和弥』
……こんな感じで大丈夫…だよな?…あ、名前いらないかな?…まぁ、いいか。
俺が手紙を書き終えると、ぞろぞろと人が入ってきた。
全員が整列し、始業式が始まった。
式は進み、校長の話が終わり、俺の紹介になった。
「楠田和弥です。よろしくお願いします。」
これくらいしか言うことない。
そのまま聞きなれない校歌を聞き、式が終わり、俺は先生と一緒に2年4組の教室に向かった。
先生がドアを開けると全員の視線が一斉に俺に集められた。
俺は視線から逃げるように小走りで先生に指定された席に着いた。
先生の指示で出席番号順に自己紹介をすることになった。
俺は出席番号が早いほうだから、すぐに俺の番になった。
「楠田和弥です。転入生です。野球部に入る予定です。委員会はやっていません。転入してきたばかりで、わからないことがたくさんありますが、仲良くしてもらえると嬉しいです。これからよろしくお願いします。」
……よし、噛まなかった!すごいぞ、俺!!!…あれ?次の人、なかなか自己紹介始めないな…。
(すぴぃぃ~)
……えっ、寝てる…?
「悪い、楠田君。後ろの小嶋さん起こしてくれ。」
「あ…はい。」
……なんで俺、転入初日にクラスメート起こしてるんだろう…。
「おいっ…起きろ!次、お前の番だぞ!」
「んぅ…?はっ、はい!!」
そいつは驚いて可愛い声を出して起き、自己紹介を始めた。
「小嶋真帆です。1年2組でした。バレーボール部です。風紀委員やってます。1年間よろしくお願いします。」
…小嶋…真…帆…?バレーボール部…?
…あのドジっ子だ!
お礼を言おうと後ろを振り返ると、もうドジっ子は眠っていた。
…それにしても可愛い寝顔だな…。
下校時間になったけど、起こすのがもったいなくてもう1度だけ寝顔を見て帰ることにする。
小嶋真帆…明日は話せるといいな。
今日は珍しく早く起きた。
俺は、楠田和弥(くすだ かずや)。
13歳。中学2年生。野球部。
昨日この大都会に引っ越してきた。
カーテンを開けて外を見ると大きなビルがいくつも立ち並んでいる。
前に住んでたところはここと同じ国か疑うくらい田舎で、電車も1時間に1本しか来ないし、遊ぶところと言ったらどこまでも続くような広い広い公園ぐらいだった。
それに比べてさすが都会。
電車もたくさん来るし、何より人が多すぎる。
右向いて人、左向いても人。
……こんな180度違うところで生活できるのかな…。でも、楽しみだな。
そんな不安と期待を抱え、新しいリビングで母さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながらトーストをかじる。
いつもと変わらない朝ごはんだけど、なんとなくおしゃれな気がする。
これからこんな毎日が続くと思うと朝起きるのも嫌じゃない。
顔を洗い、真新しい学ランに手を通すとなんとなくしゃきっとした気持ちになってきた。
母さんもきれいな服に着替えて気合い入れて化粧もしている。
俺より母さんの方が主役みたいだ。
「和弥ー!学校行くよ!」
「わかった。」
ドアを開けるといろんな匂いが俺の鼻先をくすぐる。
コーヒー、柔軟剤、甘いはちみつ…
……幸せな匂いだなぁ。
いろいろと考えながら歩いていると大きな中学校の校舎が見えてきた。
校門の横の力強い桜の木には、薄桃色の小さな花が咲き誇っている。
トラック1周300メートル以上ありそうなグラウンドもきれいに整備されていて、その端には人だかりができている。
俺は、人だかりがなくなってから母さんとクラスを確認しに行った。
……5組?!ひとつの学年にクラスってこんなにあるんだ…。俺は…2年4組か。今まで1組しかなかったから新鮮な気分。
どこからか湧いてくる、嬉しいような楽しいような言葉では上手に言い表せない気分に浸っていると、若い男の人が走ってきた。
「転入生の楠田さんですか?私、和弥君の担任をさせていただく小川です。」
……えっ?この人先生?!若すぎるだろ!
母さんと別れ、先生について行くと体育館に案内された。
「うわっ!」
体育館の舞台裏、暗闇の中でなにかを蹴飛ばした。
……ん?バレーボール…?名前が書いてある。『小嶋真帆』…?バレーボール部の人か?ボール置いて帰るとかどれだけドジなんだよ…。
でも、このバレーボールのおかげで緊張がほぐれた。
挨拶も上手くいきそうな気がしてきた。
……このボールわかりやすいところに置いておこう。…でも、もしここにわざと置いて行ったならすごい迷惑だよな…。誤解されないように手紙書こう。…ノートしかないじゃん、俺のカバンの中。仕方ない。端っこちぎって書けばわかってくれるかな?
『舞台裏に忘れてましたよ。わかりやすいようにここに置いておきますね。楠田和弥』
……こんな感じで大丈夫…だよな?…あ、名前いらないかな?…まぁ、いいか。
俺が手紙を書き終えると、ぞろぞろと人が入ってきた。
全員が整列し、始業式が始まった。
式は進み、校長の話が終わり、俺の紹介になった。
「楠田和弥です。よろしくお願いします。」
これくらいしか言うことない。
そのまま聞きなれない校歌を聞き、式が終わり、俺は先生と一緒に2年4組の教室に向かった。
先生がドアを開けると全員の視線が一斉に俺に集められた。
俺は視線から逃げるように小走りで先生に指定された席に着いた。
先生の指示で出席番号順に自己紹介をすることになった。
俺は出席番号が早いほうだから、すぐに俺の番になった。
「楠田和弥です。転入生です。野球部に入る予定です。委員会はやっていません。転入してきたばかりで、わからないことがたくさんありますが、仲良くしてもらえると嬉しいです。これからよろしくお願いします。」
……よし、噛まなかった!すごいぞ、俺!!!…あれ?次の人、なかなか自己紹介始めないな…。
(すぴぃぃ~)
……えっ、寝てる…?
「悪い、楠田君。後ろの小嶋さん起こしてくれ。」
「あ…はい。」
……なんで俺、転入初日にクラスメート起こしてるんだろう…。
「おいっ…起きろ!次、お前の番だぞ!」
「んぅ…?はっ、はい!!」
そいつは驚いて可愛い声を出して起き、自己紹介を始めた。
「小嶋真帆です。1年2組でした。バレーボール部です。風紀委員やってます。1年間よろしくお願いします。」
…小嶋…真…帆…?バレーボール部…?
…あのドジっ子だ!
お礼を言おうと後ろを振り返ると、もうドジっ子は眠っていた。
…それにしても可愛い寝顔だな…。
下校時間になったけど、起こすのがもったいなくてもう1度だけ寝顔を見て帰ることにする。
小嶋真帆…明日は話せるといいな。