やさしい先輩の、意地悪な言葉
隆也も、最初は私にはまったく興味がなくて、だからこそ四年生になるまでほとんど話したことがなかったんだけど、四年生の春先に行った、京都へのサークル旅行でたまたま行動グループがいっしょになり、そこで初めてまともに話した。



『え、今まで誰とも付き合ったことないの? マジで?』

あの時の隆也は、信じられないと言わんばかりの目で私のことを見つめてきた。

でも、それがきっかけで隆也は私に興味をもってくれた。どんな人間なのか知りたくて、私をデートに誘ってくれたり、ご飯に連れだしてくれたりした。


最初こそニガテだった隆也だけど、それまでは、
『あの子は男子とあまりしゃべらない』
『男子の前ではやけにおとなしいし、しゃべらないからなに考えてるかわからない』
とサークル内の男性から常に言われがちだった私は、隆也が誘ってくれることが少しうれしくもあった。


それに、少しずつ話していくうちに、隆也の友だちが多くて明るいところとか、男らしくて力があるところとか……笑顔が子どもみたいにかわいいところとか。そういう面に、自然に惹かれていった。


いつしか、私が隆也を好きだという気持ちは、隆也にバレてしまったらしく、


『付き合ってあげようか?』

と言われた。


普通に考えたら上から目線の俺様発言だけど、私はそう言ってもらえたことがとにかくうれしくて、何度も首を縦に振った。そんな俺様発言も隆也らしくて素敵だと思ったし。


そんな感じで付き合うことになったのが三年前のちょうど今頃。真夏の暑い日だった。
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