やさしい先輩の、意地悪な言葉
今度は私から、デートしてください
次の日。私はいつも通りの時間に、いつも通り出社し、いつも通りの振るまいをした。

一回だけ、神崎さんがこそっと「大丈夫?」と聞いてくれて、私も「はい。ありがとうございます」と答えた。



……神崎さんのことは、“気になる人”っていう感じだった。
だけど、昨日のことがあって……神崎さんの存在がますます大きくなっていった。
朝、心配してくれたこともうれしかった。

私は、神崎さんのことを……。



昨日に引き続き、いや昨日以上に神崎さんにドキドキしながら一日仕事をしていた。


仕事もほぼ終わった頃、課長から書類のコピーを頼まれ、営業課のデスクのすぐうしろにあるコピー機に向かった。

営業さんたちも外回りから帰ってきてる時間だったから、神崎さんも自分のデスクで仕事をしていた。

定時近くでもうほとんど仕事も終わってるから、みんな和やかに雑談もまじえたりしながら仕事をしているけど、周りにほかの営業さんもいるから神崎さんに話しかけることはできない。
でも、コピーをとってる間は距離は少し近くて、たったそれだけのことなのにバカみたいにドキドキしてしまった。


コピー機の前で、コピーが終わるのを待っていると、預金課の先輩が私に話しかけてきた。

「遥香ちゃん、お客さんからクッキーもらったからどうぞ」

「えっ、ありがとうございます」

先輩は丸い筒状の缶を持っていて、その中にはいろんな動物の形をしたクッキーがいくつか入っていた。
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