やさしい先輩の、意地悪な言葉
「いつからだったかな。たぶん、ふたりが一日デートしたあの頃からだったと思うんだけど、もしかしてあの日、なにかあったのか? 祐介はなにも言わないし、遥香ちゃんにもなんとなくちゃんと聞けなかったんだけど」

「そ、その……」

「ほんとに祐介おかしいんだよ。おかしいついでに、これは遥香ちゃんには関係ないけど、さっき突然、マルチーズの飼い方聞かれたわ。俺マルチーズどころか犬すら飼ったことないのに」

「げほっごほっ」

ちょ、ちょっと待って。動揺しすぎて唾が変なところに入った。


「おい、どうした。大丈夫?」

「けほっ。はい……」

「……そういえば、この前ふたりして、マルチーズだかゴールデンレトリバーだか犬の話してなかった? 預金課の子がクッキーくれた時。もしかしてあれに関係してんの?」

「あっ、あのあの!」

二山さんのその言葉に私は激しく動揺してしまい、二山さんは「え? マジで?」とにやりと笑った。


「なになに。マルチーズとゴールデンレトリバーがなんなの? ふたりのうちどっちかが飼ってるとか? なあなあ」

「えと……!」

二山さんに楽しそうに詰め寄られる。
グイグイとこられると、どうにもごまかすことができない。


……私は観念して、土曜日に神崎さんと過ごした日の、マルチーズとゴールデンレトリバーのくだりを恥ずかしながら話した。

すると。


「ぶわーっはっはっはっ!」
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