やさしい先輩の、意地悪な言葉
二山さんがハデに笑いだした。


「ウソだろ、マジかよ! それであの会話? お互いの方気にしながら『ゴールデンレトリバーが好き』、『マルチーズが好き』って? あはははは! お前ら中学生かよ! 腹いて〜」

二山さんはお腹を抱えてほんとにおかしそうに笑う。そ、そんなにおかしい話だっただろうか。私はほんとにドキドキしたんだけど!

……でも確かに、オトナの恋らしくはなかったかもしれない。オトナだったら、もっとわかりやすく自分の気持ちをスマートに伝えられる気がする。

私は、恋愛に関しては全然オトナじゃない。付き合ったことがあるのは隆也だけだし、いつも隆也についていくだけだった。嫌なことを嫌ってはっきり言うとか、自分の気持ちをきちんと伝えることもできていなかった。


……でも、もし神崎さんが私のことを気にしてるっていう話が少なからず本当なら……


「神崎さんも、恋愛はニガテなんでしょうか?」

神崎さんが、もし私のことを少しでも気にしていて、あの場で『マルチーズが好き』と答えてくれたのなら、それはもしかしたら私といっしょで、自分の気持ちをわかりやすく伝えるオトナらしい恋がニガテだからかもしれない……と思った。


「……なんて、そんなわけないですよね。神崎さん、モテるだろうし、今までたくさんの人と付き合ってきたんでしょうね」

私がそう言うと、二山さんは。


「……俺がどこまで勝手に話していいのかわからないけど、たぶん意外に、まともに恋愛してきてないと思うぞ」
< 105 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop