やさしい先輩の、意地悪な言葉
「え?」

「初めて彼女ができたのは高校生の時らしいけど、一年くらいで別れて、それを引きずって高校時代はそれっきりだったって言ってたな。
大学生になってから、何人かとは付き合ったことはあったみたいだけど、いつか酒のせいで相手を傷つけたらって思うとなかなか深いところまで踏みこめなくてすぐに別れちゃったりとか、本人の中でいろいろ恋愛に葛藤があるっぽくて」

「そう、なんですか……」


……神崎さんはやさしくて、素敵で。きっといろんな恋愛をたくさん経験してるんだと思ってた。

そういえば、土曜日も感じたっけ。神崎さんは、私が思ってたよりも、遠い存在じゃないって。
……恋愛面でも、もしかしたら距離は遠くないのかもしれない。……私のがんばり次第では……。



「まあ、とにかくだ」

二山さんは改まった感じで言った。

「祐介が遥香ちゃんのことを気にしてるのは確かだよ。遥香ちゃんも祐介が気になってるんだろ? ふたりがうまくいったら俺もうれしいし、まあ下手に手ぇ出したりはしないけど、応援してる」

「その……ありがとうございます」

「遥香ちゃんも見るからに奥手だし、自分からアタックって難しいだろうけど、祐介もそんなわけでああ見えて恋愛下手なところあるからさ。よかったら遥香ちゃんから仕掛けてあげてよ」

私からなんて絶対ムリだよ……って、普段の私だったら絶対そう思うはずなのに。



「はい」

なぜか自然と、そんな風に答えていた。
< 106 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop