やさしい先輩の、意地悪な言葉
午後、仕事も落ち着き、ふと辺りを見回すと、融資課のキャビネットの前で神崎さんがなにかを探しているようだった。
「あの……なにかお探しですか?」
私は神崎さんのとなりから、そっと彼に話しかける。
「あ、うん。この書類、ここの会社の決算書のファイルに綴りたいんだけど、この期のファイルってどこかな」
神崎さんに書類を見せてもらうと、このキャビネットにはしまっていない期のものだった。
「この期のものは、書庫室の奥のキャビネットに綴ってあるんです。わかりにくいですし、私あとでしまっておきます」
私はそう言って、神崎さんから書類を受け取ろうとするけど。
「いや、いつもやらせちゃって申しわけないから、場所だけ教えて? 俺も自分で覚えるから」
神崎さんは、やさしい表情でそう言ってくれる。
そういえば、さっき二山さんが言ってた。私が忙しそうな時に、神崎さんが心配してくれてるって……。
きっと今のこの言葉も、そのやさしさからの言葉だろう。
「えと……そんなに気を遣わないでください。私、いつでもそのくらいやりますから。
でも……じゃあ、場所だけ一応教えておきますね」
そう言って、私は神崎さんも書庫室に向かう。
……書庫室に行けばきっとふたりきりになれる、というやましい気持ちがあったことも……否めないけど。
ーー……
書庫室には予想通り誰もいなくて、私たちふたりきりだった。
私は神崎さんが探しているファイルの入っている書庫を開ける。
「あの……なにかお探しですか?」
私は神崎さんのとなりから、そっと彼に話しかける。
「あ、うん。この書類、ここの会社の決算書のファイルに綴りたいんだけど、この期のファイルってどこかな」
神崎さんに書類を見せてもらうと、このキャビネットにはしまっていない期のものだった。
「この期のものは、書庫室の奥のキャビネットに綴ってあるんです。わかりにくいですし、私あとでしまっておきます」
私はそう言って、神崎さんから書類を受け取ろうとするけど。
「いや、いつもやらせちゃって申しわけないから、場所だけ教えて? 俺も自分で覚えるから」
神崎さんは、やさしい表情でそう言ってくれる。
そういえば、さっき二山さんが言ってた。私が忙しそうな時に、神崎さんが心配してくれてるって……。
きっと今のこの言葉も、そのやさしさからの言葉だろう。
「えと……そんなに気を遣わないでください。私、いつでもそのくらいやりますから。
でも……じゃあ、場所だけ一応教えておきますね」
そう言って、私は神崎さんも書庫室に向かう。
……書庫室に行けばきっとふたりきりになれる、というやましい気持ちがあったことも……否めないけど。
ーー……
書庫室には予想通り誰もいなくて、私たちふたりきりだった。
私は神崎さんが探しているファイルの入っている書庫を開ける。