やさしい先輩の、意地悪な言葉
大学を卒業しても、お互いの家は近かったし、交際は順調に続いた。

……でも、二年記念日を過ぎた頃から、隆也が浮気してるんじゃないかって感じ始めた。

最初は、隆也の家で長い髪の毛を見つけたり、洗ってないコップに口紅がついていたり……浮気を断定できるほどではなかったけど。


浮気してる? なんて怖くて聞けなくて、なにも気づいてないフリを続けた。
すると、隆也はだんだん浮気を隠そうともしなくなってきた。
家に私のものじゃない化粧ポーチが堂々と置かれていたり、隆也は料理ができないのにお鍋の中にカレーが入っていたり、とどめはティッシュに包むこともなく堂々と使用済みの避妊具がゴミ箱に捨てられていたのを発見した時だった。


さすがにこの時は『浮気してる?』って隆也に聞いた。でも隆也は悪びれるどころか、
『浮気っていうか……べつにほかの誰とも付き合ってはないけど、でもセフレはいる。なんか、お前だけと過ごしてるの飽きたし』
と言ってきて、めまいがした。


隆也が浮気をしているということには気づいていたものの、まさか『飽きた』なんて思われてたとは知らなくて、ショックすぎてその時はその場で泣いた。

でも隆也は、

『だからショックが軽減されるようにってわかりやすく浮気匂わせてたのに』

と、またしてもとんでもない発言をした。


そういえば、隆也と付き合ってから二年間、ケンカをしても誤解をされても、隆也の口から『ごめん』という類の言葉は一度も聞いてこなかった……という驚きの事実に、私はこの時ようやく気づいた。
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