やさしい先輩の、意地悪な言葉
…….好きな人から、合コンに誘われる。
心がずきんと痛んだ。

だけどやっぱり、これは神崎さんのやさしい冷たさだと思ってしまう。私に、未練を持たせないようにしてくれてるんだ、って。


だけど、せっかくのご好意だけど、今の自分の気持ち的にその合コンには行けない……そう伝えようとしたその時、制服のスカートのポケットの中で、携帯が鳴った。


「あっ、すみません! ファイルを取って課長に渡したらそのままお昼にあがるつもりだったので、携帯をポケットに入れていました……!」

「そういえば瀬川さんのお昼の時間、もうとっくに過ぎてない?
あ、もしよければここで電話出なよ。俺はもう営業室戻るから」

神崎さんはちょうど綴りものを終えたファイルをキャビネットに戻すと、そのまま書庫室を出ていった。


すみません神崎さん……。申し訳なさを感じつつ、私はポケットから携帯を取り出し……


そしてかたまった。



「隆也……?」

携帯のディスプレイには、この間あんなことがあって、正直それきりになっていた彼の名前が。
< 118 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop