やさしい先輩の、意地悪な言葉
……私は、慎重に、自分なりに言葉を選んで……自分の思っていることを隆也に伝えていった。


「……あのさ、なんで今日、私のこと呼び出したの?
私、この間の一件で……気づいたよ。隆也は私と付き合っていた二年間も、私のこと好きなわけじゃなかったんだって。私が隆也に逆らわないから、私と付き合ってくれてたんだよね……?」

私の言葉に、隆也が「そうだよ」と答えた。わかっていたはずなのに、はっきり認められるとちょっと胸がずきんと痛んだ。



「……じゃあ、私がほかの誰を好きになっても、隆也にとってはべつにどうでもいいことじゃない?」

傷ついてることを隠しながら、私はそう聞くけど。


「お前のことはべつに好きじゃないけど、お前からほかの男を好きになるのは、俺がフラれたみたいになるからマジムカつく」

「……」


隆也の言ってることが、本当に理解できない。
隆也は明らかに不機嫌な顔をしながら、タバコを吸い始めた。


そして、煙を深く吐き出すと、めんどくさそうな表情で、言った。


「俺さぁ、片想いしてるやつって、マジ意味不明なんだよな」

「え?」

「お前は、その“気になる人”ってのとは両想いなわけ?」

「……フラれた」

「だろうな」

「え?」

「まぁお前も知ってるだろうけど、お前大学時代、男からそんな好かれてなかったし、俺も含めてお前のこと好きになる奴なんかいないだろうし」

「……」

それは、そうだろうけど。
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