やさしい先輩の、意地悪な言葉
「……私の好きになった人ね、確かにフラれちゃったけど、すごく……やさしくて素敵な人なの。
女の子としては見てもらえなかったけど、私が仕事で忙しくしてたら心配してくれるし、私に頼めば済むことを自分でやってくれたり……」

「……」

「……そういうのが、すごくうれしかったの。思えば私、好きな人からうれしいことしてもらったこと……正直あまりなかった」

「……」

「そういううれしくてドキドキした気持ちとか、たとえその恋が実らなくたって、それがムダになることってないと思う。
……私、隆也といた時間も決してムダだったなんて思ってないよ。隆也は私のことなんとも思ってなかったとしても、隆也のためにいろいろしてあげてる時間は嫌いじゃなかった」

「…………」

「でも、もう隆也のことを恋愛対象として見ることはできない。たとえ私のことを構ってくれる男性がもう現れないとしても、私は私の片想いをしていくから」


……自分の気持ちを話すのがニガテな私にしては、ちゃんと伝えることができたと思う。もちろん、仮にも二年も恋人をやっていたのだから、隆也には自分のことを話しやすいんだけど。


私の言葉に対して、隆也は。



「……だから! なんで俺がフラれてるみたいになってるんだよ!」

思いきり、声を荒げた。周りの人たちがちらちらと私たちの方を気にするけど、隆也はそれに構うことはなく話を続ける。


「俺のペットになるくらいしか能がねぇくせに、調子のってんじゃねーよ!
だいたい、その男にやさしくされただか心配してもらってるだか知らねぇけど、お前なんかにそうやって接するなんて、そいつ相当頭おかしい男だな!」


……え。
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