やさしい先輩の、意地悪な言葉
やさしい先輩の、意地悪
これから改めてフラれるというのに、なんで場所が神崎さんの家なのか……
そう思ったけど、私はなにも言わずに神崎さんのあとをついていく。
神崎さんの家におじゃまするのは当然初めてだった。
神崎さんは、駅から徒歩十五分ほどのところにある、たぶんひとり暮らし対象のアパートに住んでいた。
玄関を入ってすぐのところに小さな調理場があり、その奥にお部屋がひとつあった。
「狭いところだけど、座って」
お部屋の中に通していただいたあと、神崎さんにそう言われ、私はゆっくりとその場に腰をおろした。
お部屋の真ん中にはガラスの丸テーブルが置いてあり、テーブルを挟んだ正面に神崎さんも座った。
「さて……」
神崎さんはひと息ついてから、
「なにから話せばいいか……」
と、つぶやくように言った。
「……あ、あの、神崎さん」
「ん?」
「そ、そんなに改まらなくていいですよ。その、答えはわかっていますし、私に気を遣わずにパシッとフッてください!」
これ以上、神崎さんに気を遣わせるのが申しわけなさすぎる。
一度はフラれてるのだし、二度目も覚悟はできてる。
なのではっきりとフッてください! と思ったんだけど。
神崎さんの方を見ると、神崎さんは少し驚いたような顔をしていて。
そして。
「……自分で言うのもあれだけど、瀬川さんの中の俺って、会社のやさしい先輩……だよね」
そう思ったけど、私はなにも言わずに神崎さんのあとをついていく。
神崎さんの家におじゃまするのは当然初めてだった。
神崎さんは、駅から徒歩十五分ほどのところにある、たぶんひとり暮らし対象のアパートに住んでいた。
玄関を入ってすぐのところに小さな調理場があり、その奥にお部屋がひとつあった。
「狭いところだけど、座って」
お部屋の中に通していただいたあと、神崎さんにそう言われ、私はゆっくりとその場に腰をおろした。
お部屋の真ん中にはガラスの丸テーブルが置いてあり、テーブルを挟んだ正面に神崎さんも座った。
「さて……」
神崎さんはひと息ついてから、
「なにから話せばいいか……」
と、つぶやくように言った。
「……あ、あの、神崎さん」
「ん?」
「そ、そんなに改まらなくていいですよ。その、答えはわかっていますし、私に気を遣わずにパシッとフッてください!」
これ以上、神崎さんに気を遣わせるのが申しわけなさすぎる。
一度はフラれてるのだし、二度目も覚悟はできてる。
なのではっきりとフッてください! と思ったんだけど。
神崎さんの方を見ると、神崎さんは少し驚いたような顔をしていて。
そして。
「……自分で言うのもあれだけど、瀬川さんの中の俺って、会社のやさしい先輩……だよね」