やさしい先輩の、意地悪な言葉
どうしよう……それって……。
神崎さんも、私のこと……?


「で、でも私なんか」

「え?」

「私、男性にほんと全然好かれなくて。私なんて、ほんとにダメで」

うれしさとか動揺とか緊張とかで混乱しながら、訴えるように必死でそう言うと。


「ダメなんて思ったこと一回もないけど」

「ウソです」

「こういう時だけ珍しく即答だね。いつもはしっかり言葉を選んでから答えるのに」

「だって……」

「好かれないって……おとなしいからとか、そういう理由じゃないの?」

「ん……はい。女子としか話さないとかそういう……」

「まぁ、そういうのがちょっとなって感じる男もいるのかもしれないけど。俺はむしろ、おとなしい女の子の方が好きだし、男友だちが少ない女の子の方が安心だし。
ていうか、男性に好かれないっていうけど、俺だけじゃなくて大和だって瀬川さんのこと後輩としてすごくかわいがってるじゃん。課長も瀬川さんを信頼してるからいろいろ仕事頼んでるし、部長も次長もほかの営業の人たちも、瀬川さんのこと嫌ってる人なんてひとりもいないよ」

「で、でも大学時代のサークルでは……」

「おとなしい女の子がニガテな男がたまたま集まっちゃったのかな? ほんと、たまたまだよそんなの」

「たまたま……?」

「……サークルっていうのが世界の中の狭い一部分だとしたら、俺がこれから瀬川さんにもっと広い世界をたくさん見せてあげたいと思うよ。なんていったら大げさだけどね。でも、いっしょにいることで視野を広げていくことはできると思う。お互いにね」
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