やさしい先輩の、意地悪な言葉
「お互いに……」

「お互いに高めあっていくのが、付き合うってことじゃないかな」

たぶんそれは、本当はずっと憧れてた、恋人との付き合い方。



「……瀬川さん」

神崎さんが、私の名前を呼びながら立ち上がり、私のとなりにそっと座る。

肩と肩が触れ合う、とても近い距離。


「神、崎さ……」

「……俺、自分から瀬川さんを遠ざけておきながら、さっき瀬川さんが告白してくれたの本当にうれしかった」

そう言うと、神崎さんは大きな右手で私の頬にやさしく触れた。



「……また傷つけることがあるかもしれないよ。
瀬川さんは自分に自信がないみたいだけど……俺も自信なんてないんだ。……こんな俺でも、いいですか?」


胸が、ドクンと高鳴った。張り裂けそうに痛くて。でも、嫌じゃなくて。


「わ……私……」

「うん」

「わ、私、これからは自分のこと大事にしようと思って、神崎さんといっしょなら、それはできると思ってて」

「うん」

「で、でも」

「うん?」

「わ、私、そもそも根本的にやっぱMだと思うんですよっ」

「う、ん?」

「さ、さっき元カレから、『お前は恋人じゃなくてペット』みたいに言われて、それはもちろんすごく傷ついたんですけど、なんか、その時に、


か、

神崎さんのペットにならなってみたいって思ってしまった自分もいて」


言いながら、私なに言ってるんだろうって本気で思った。
神崎さんも、驚いた顔をしていた。
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