やさしい先輩の、意地悪な言葉
好き、と言ってくれたことと、名前で呼んでくれたことに、胸がまたしても高鳴って……心臓が壊れそうになる。
真っ赤な顔で、目を見開いて、変な顔しちゃったと思う。
それなのに……神崎さんは、私に顔を近づけて……今度は指じゃなくて、神崎さんの唇が、私の唇に触れた。
「ん……っ」
神崎さんのキスは、なんだか神崎さんのイメージとは違って。
もっと、やさしくて触れるだけのキスをしそうなイメージだったけど、最初からとても深いキスをしてきた。
そのままぎゅっと抱きしめられて、神崎さんとの距離が0になった感じがする。
……もともと、決して近くはなかった私たちの距離。
そして、一度はすれ違って、さらに遠のいてしまった。
でも、今はこんなに近くにいる。
唇が離れると、神崎さんは熱っぽい瞳で私を見つめた。
「…ごめん、びっくりした?」
「い、いえ……」
「……遥香ちゃんのためにさ、やさしくて素敵な先輩でい続けたいと思うけど……そもそも俺、そんなに紳士じゃないよ。酔ってなくたって、好きな子がこんな近くにいたら、意地悪だってしたくなる」
神崎さんは、今度は両手で、私の顔を包みこむようにやさしく触れた。そして。
「ゴールデンレトリバーの方が、よっぽどガマンできて賢いと思う」
「ふふ」
私は思わず笑ってしまった。
「それでも、神崎さんがやさしくて素敵な先輩であることにかわりはありませんよ」
「そうかな」
「はい」
でも、“やさしくて素敵な先輩”というのは、私だけじゃなくて、みんなにとっての神崎さん。だから……
「……私の前では、時々意地悪なこと、してください」
あなたの特別になりたいって、強く思うから。
「……ありがとう」
そう言って神崎さんは、また私にキスをしてくれた。
ーーやさしくて素敵な先輩。
時々は意地悪な
私だけの
素敵な人です。
***End***
真っ赤な顔で、目を見開いて、変な顔しちゃったと思う。
それなのに……神崎さんは、私に顔を近づけて……今度は指じゃなくて、神崎さんの唇が、私の唇に触れた。
「ん……っ」
神崎さんのキスは、なんだか神崎さんのイメージとは違って。
もっと、やさしくて触れるだけのキスをしそうなイメージだったけど、最初からとても深いキスをしてきた。
そのままぎゅっと抱きしめられて、神崎さんとの距離が0になった感じがする。
……もともと、決して近くはなかった私たちの距離。
そして、一度はすれ違って、さらに遠のいてしまった。
でも、今はこんなに近くにいる。
唇が離れると、神崎さんは熱っぽい瞳で私を見つめた。
「…ごめん、びっくりした?」
「い、いえ……」
「……遥香ちゃんのためにさ、やさしくて素敵な先輩でい続けたいと思うけど……そもそも俺、そんなに紳士じゃないよ。酔ってなくたって、好きな子がこんな近くにいたら、意地悪だってしたくなる」
神崎さんは、今度は両手で、私の顔を包みこむようにやさしく触れた。そして。
「ゴールデンレトリバーの方が、よっぽどガマンできて賢いと思う」
「ふふ」
私は思わず笑ってしまった。
「それでも、神崎さんがやさしくて素敵な先輩であることにかわりはありませんよ」
「そうかな」
「はい」
でも、“やさしくて素敵な先輩”というのは、私だけじゃなくて、みんなにとっての神崎さん。だから……
「……私の前では、時々意地悪なこと、してください」
あなたの特別になりたいって、強く思うから。
「……ありがとう」
そう言って神崎さんは、また私にキスをしてくれた。
ーーやさしくて素敵な先輩。
時々は意地悪な
私だけの
素敵な人です。
***End***