やさしい先輩の、意地悪な言葉
嫌われてる?
……夕べはあのあと、隆也はほかの女の子とどう過ごしたんだろう、と。家に帰ってからも隆也のことが気になって、夕べは全然寝られなかった。


今も、給湯室で洗いものをしながらも、頭の中は隆也のことでいっぱいだ。



いつか私のもとに戻ってくる、仮にそんな確証があったとしても、隆也とこれ以上かかわるのは私のためにならない。それはわかってる。
しかも、実際はそんな確証すらないし。ただの私の願望だし……。


自分のことを大事にする。

それが大切なことだっていうのはちゃんとわかってる。

でも、どうしてもできなくてーー……。




「あれ、今日もいっしょになったね」

突然、うしろから神崎さんの声が聞こえた。
慌てて振り向けば、神崎さんがにっこりと笑いながらそこに立っていた。


「お、お疲れ様ですっ。えと、コーヒーですか?」

「いや、手を洗いたいだけ。水道使ってもいい?」

「は、はいっ。どうぞっ」

私がその場から右によけると、神崎さんは「ありがとう」と言って、水道の蛇口をひねった。



……そういえば昨日、『神崎さんに自分を大事にする方法を教えてもらいたかった』なんて思ったっけ。

まあそんなこと、聞けるわけないけど……。



「そういえば、昨日はどうだった?」

不意に神崎さんからそう聞かれ、私はぎくりとし、言葉につまった。
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