やさしい先輩の、意地悪な言葉
「え、えと……」

「……あ、ごめん。変な意味じゃないよ? ごめん、またセクハラっぽかったかな?」

「い、いえ! そんなことは思ってないです!」

神崎さんは、私のことを心配してくれてるんだと思う。
でも、なんて答えればいいのかわからなかった。


私がなにも言えずに口ごもってしまったことで、神崎さんになにか誤解させてしまったのか、
「ごめんね」
と、神崎さんは蛇口を閉めながら私にそう言った。


ち、違うんです。神崎さんは悪くないんです……。

人とうまく話せない自分の性格が、こういう時ほんとに嫌になる。

こんなにやさしくて素敵な先輩に気を遣わせてしまうなんて……。


どうしよう、なんて言えば……と困っていると。


「祐介、ここにいたのか」

と、営業の二山さんが廊下から給湯室にひょこっと顔を出した。


「どうかした? 大和」

「今夜、七時に店の予約しちゃったけど、仕事終わりそうか?」

「全然大丈夫だよ。予約ありがと」

そんな会話をしながら二山さんは給湯室に入ってきた。三人給湯室に入るとちょっと狭いから私は出た方がいいかな。



……二山 大和(ふたやま やまと)さん。
神崎さんと同じ営業課の先輩で、神崎さんとは同期らしい。
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