やさしい先輩の、意地悪な言葉
「で、金曜日は祐介になんて言われたんだ?」

二山さんが私をまじまじと見ながらそう聞いてくる。

「え、いえ、それは……」

「なんだよ。ここまできて隠すことないだろ。祐介だって聞きたいよな?」

「うん。教えて」

「え、えとえと……」

ど、どうしよう。もともと言うつもりはなかったし、これ以上謝らせるわけにはいかないし……。



だけど。

ちら、と神崎さんを見れば、神崎さんがじ……っと、不安げで切なげな瞳でこれ以上ないくらいまっすぐに私を見つめてきて、恥ずかしいのに目が逸らせなくて……!

ドキドキするし緊張する。
私はまたしても動揺して。

「あああああの、『典型的なダメ女の代表例』って……!」

……と、さっきと同様、ついそのまま答えてしまった……。




……しん……と、書庫室内が静まり返る。



「……マジで? いや、なんでダメ女なのか俺にはわかんねぇけど……」

沈黙をやぶったのは二山さんだった。
でも、二山さんも戸惑っているようでその声はかなり小さい。


「えと……」

ど、どうしよう。変な空気に。って私がこの空気にしちゃったんだけど。


やっぱりウソです、なんて言ってしまおうかーーと思った、その時。



「ごめん!」

「ひゃっ」

神崎さんが、また私の肩を掴んで、さっきと同じように、いやさっきにも増してとても真剣な表情でそう言った。

……やっぱり顔、近いです‼︎



「顔、顔」

二山さんにそう言われ、神崎さんははっとして私から少し離れた。

……神崎さんと話す時はただでさえ緊張するのに、こんなクセを出されたら本当に心臓がもちません……!
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