やさしい先輩の、意地悪な言葉
デート? と、神崎さんが真剣な表情で二山さんに聞き返す。すると、二山さんも「そうだ」と頷き。

「後輩の女の子にひどいこと言って傷つけたんだ。一日デートして、食事おごるなり映画おごるなりして償え」

と、話した。


デ、デートって言うからドキッとしたけど、お詫びに一日付き合ってもらう、みたいな感じですね……。でも、それだって申しわけない。



「あの、そこまでしていただかなくても本当にーー……」

でも、私が最後まで言い切る前に。



「そうか! そうだな‼︎」

「えっ」

神崎さんは急にそう言うと、私の両手を胸の高さでぎゅっと握った。


「あっ、あのっ⁉︎」

「一日デートしたくらいで俺の無礼が許されるとは思っていないけど……俺にできることならなんでもして償いたい。

だから、


瀬川さん、今度の土曜日、俺とデートしてください」


……ええぇ!⁉︎



「いっ、いえ、そんな」

「……ダメ?」

「……!」

ままままままた顔が近いぃぃ‼︎
そんな近い距離で、そして真剣な表情で見つめられたら拒否することができません……‼︎

二山さんも、さっきは『顔近い』ってつっこんでくれたのに、今はなにも言わない。
……な、なにも言わなければ私が断れないと思ってるのかな? 二山さんは神崎さんに私とデートさせようとしてるわけだし……。

で、でもデートなんてしませんよ‼︎ 神崎さんにこれ以上気を遣わせるわけにもいかないし、なにより、私には隆也がいるのにほかの男性とデートなんて……‼︎
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