やさしい先輩の、意地悪な言葉
結局、あのあと。
少し遅めのお昼休みに、携帯を確認すると神崎さんからのLINEメッセージが二件届いてた。

……うちの店は、部長の方針で、よっぽど個人情報を知られたくない人以外は、基本的に社員みんなでメールアドレスかLINEのIDを教え合うことになってる。だから神崎さんのLINEも、私の携帯には元から自然に登録されていた。


一件目のメッセージには土曜日の集合場所と集合時間の提案が書かれていて、二件目には改めて謝罪の言葉が綴られていた。


……本当に、私は謝罪のデートとか求めてない。
もちろん、それをはっきり伝えられなかった私が悪いんだけれど。


いっしょに出かけたくないのは、隆也のことが好きだからっていうのもあるけど、それだけじゃなくて。

私は人と話すのがニガテで、神崎さんとはとくに緊張してしまうのに、その神崎さんと休日にいっしょに過ごすとか……。

二山さんも、もう数ヶ月もいっしょに働いてるんだからそのくらいはわかってるはずなのに、なんで勝手にあんなこと言うの。


神崎さんだって……



あの言葉を発してしまったのはお酒のせいだっていうのはわかったけど、普段の神崎さんだって、私のことを『ダメな女』って多少なりとも感じていたからこそ発せられた言葉……って考えた方が自然じゃない? だって、普段はなんとも思ってなかったら、お酒飲んだからって突然あんなこと言わないよね……?



そんなこととかをいろいろと考えながら暗い気持ちで帰路についていた。
駅に向かって、だんだん人通りが増える。
それはいつも通りの光景なのに、人通りの多さを、なぜか切なく感じてしまった。
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