やさしい先輩の、意地悪な言葉
……隆也に会いたい。
ふと、そう思ってしまった。
この時間なら、もう家に帰ってきてるかも。
でも、自分からは会いに行けない。別れてからは、隆也から連絡をくれた時じゃないと会えないから。


その時だった。

スカートのポケットに入れてた携帯が震えた。
LINEかな? 携帯を取り出して、画面を確認すると、


私はすぐにその電話に出た。


「はいっ、もしもし隆也⁉︎」

『おぅ。てか電話出るの早ぇな』

「う、うん! どうしたの!」

今まさにものすごく隆也からの連絡を待っていたところだったため、声がやたら弾んでしまう。私のそんな様子を隆也は若干不審がりながらも。


『あのさぁ、もう仕事終わった?』

「うん! 今、会社から駅に向かって歩いてたとこ!」

『今から俺んち来れる?』

「もちろんだよ! 私も行きたいと思ってたの! なにか買ってきてほしいものとかある?」

『ケーキ食べたい』

「わかった! いくつ?」

『じゃ、ふたつ』

「わかった! すぐ行くね!」

そう言って通話を切ると、私は自然ににやけてしまう。そしてそのにやけ顔のまま、デパートのケーキ屋さんへと走った。



ーー……

隆也は甘いものが好きだ。

隆也がケーキをふたつ食べたかったのか、私といっしょに食べる分も含めてふたつと言ってくれたのかわからなかったから、とりあえず四つ買った。

ショートケーキふたつと、チョコケーキふたつ。
ちょっと奮発して、普段よりお高めのものを買った。
会いたいって思った時に、会える? って言ってもらったのがすごくうれしかったから。
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