やさしい先輩の、意地悪な言葉
駅から歩いて五分ほどのところに、その映画館はあった。
それなりに大きいその映画館は、休日ということもあり、たくさんのお客さんでにぎわっていた。


券を買う列に入る前に、その手前に置かれたいくつかのボードにそれぞれ貼られた、上映中の映画のポスターを見ながら、どの映画を観るかいっしょに決めることにした。


「瀬川さんは、なにがいい?」

「えと……」

どうしよう。私が決めた方がいいかな。

時間的にちょうどよく観れそうなのは、少女漫画が原作になってるラブストーリーと、『誰も予想できない結末』とキャッチフレーズがポスターに書かれているサスペンスと、最高技術の特撮をふんだんに使ったと言われているゾンビ映画。


一番観たいのは、ラブストーリーだ。
もともとラブストーリーは好きだし、原作の少女漫画も、前に同期の子に借りて読んだらすごくおもしろかった。


……でも、男性はこういうの、どうなんだろ?
ここに来る途中で、神崎さんは『映画ならなんでも観る』と言っていたけど、さすがに少女漫画原作のラブストーリーは観ないし興味ないよね……?


じゃ、サスペンスかな? 普段はあんまり観ないけど、嫌いじゃないし。
……あ、ダメだ。電光掲示板で確認したら、サスペンスは次の時間の上映、満席だった。
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