やさしい先輩の、意地悪な言葉
神崎さんは、力の入らない私の体をひょいっと抱え上げた。


「あっ、あの」

そしてそのまま、私をベッドの上におろすと、すぐに私の上に覆いかぶさってきた。


ど、どうしよう……!
抵抗できずにいると、私の右手を、神崎さんの左手がやさしく握り、する……と指と指が絡まった。


そして神崎さんの右手は、私の髪、頬、唇に触れ……一瞬、服の上から私の胸付近を触った。


ぴく……と、私の体が反応する。


ダ、ダメ……。こんな形で……。

隆也とのことも、まだ終わったわけじゃないし……。


だけど、やっぱり必死で抵抗できていない自分がいた。

拘束されて無理やりされてるわけじゃないから、本気で嫌なら、多分逃げられる。


だけど、できない。できるのに、できない。



……それは、したくないから、ということだろうか。



私は気づいたら




自由のきく左手を神崎さんの背中に回そうと――……



してしまった、その時。




――こてん。



……ん?


神崎さんが、私の上から体をずらし、私のとなりに横になった。



「……あの……?」

「寝るわ」

「え?」

まさかの発言に、私はまぬけな声を出してしまった。


そして、つい、


「……しないんですか?」

と、聞いてしまった……。



「なに、したいの?」

「えっ、いえ、そういうわけでは!」
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