やさしい先輩の、意地悪な言葉
神崎さんは、そんな私の顔をじっと見つめるだけで、なにも言わない。



「神崎さん……?」


その時だった。



「んっ……⁉︎」




ーー私は、もっとよく考えるべきだったのかもしれない。


居酒屋を出てここに来てから二時間が経ってる。
普通の人だったら、飲んだあとだったとしても、いくらか酔いは落ち着いてるだろう。私も、もうほとんどお酒消えてるし。



だから神崎さんもそうなのだろうと思っていたけど、人の何倍もお酒に弱い神崎さんが、人と同じ時間で酔いを覚ますなんて、ムリな話だったんだ。


神崎さんはまだ酔っていた。

さっき居酒屋にいた時に比べたらだいぶ落ち着いていたけど、神崎さんからお酒はまだ完全には抜けていなかった。



……突然の“この状況”に驚くことしかできない私は、ちょうど二山さんからこんなLINEが届いてることに全然気づかなかった。



『さすがにもう家帰ってきてるとは思うけど念のため。

万が一、祐介と酒を飲んだとしたら、飲んだ直後よりも若干酔いが覚めてきた頃に一番気をつけて。』




「んっ、ん……」





『酔いが覚めた頃、キス魔になるから』




……二山さんからのLINEがもう少し早く来ていたら、この状況も回避できたかもしれないけど。


私は、神崎さんが再び眠ってしまうまでの約十分間、彼に何度も何度もキスをされてしまった。
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