やさしい先輩の、意地悪な言葉
「マジうぜぇわ、お前」

隆也がひどく冷たい目で私を見る。本当に、怖い。


「ご、ごめんなさい……でも私……」

震える声で必死に説明しようとする。でも、


「そういうおどおどした態度もすっげぇムカつくんだよ」

と、髪を引っ張られた。


「いっ……たい」

あまりの痛さに……いや、それよりも恐怖とショックで涙目になった。


……なんとなく、思った。

ふーん、あっそ、で終われば、本当にそれでよかった。

実際はそんな簡単な言葉で終わらず、今のこの状況だ。

でもそれは、決してタイミング的に隆也の機嫌が悪いからってだけじゃないかもしれない。


今、隆也はきっと、自分を否定されたことによってありえないくらいの怒りを感じてる。

私は今まで、はっきりと隆也のことを否定したことはなかった。


……隆也が私とだけは二年間付き合ってた理由が、わかった気がした。

それは決して、私のことが特別に好きだったからじゃないかもしれない。

私が、隆也のことを否定しなかったから、いいようにそばに置いておこうと思ってたのかもしれない。



……隆也は私の髪から手を離すと、その場に突き飛ばした。

そのまま床に押し倒されそうになり、そうなったらこのあとなにをされるのか……って考えただけでゾッとして、私は必死の力で立ち上がり、荷物を持ち、隆也の家を飛び出した。



……隆也は、追いかけてまではこなかった。
このまま二度と会うことはないかもしれない。でも、あれだけキレてたんだから、そうとも言い切れない。隆也の中で納得できていないのは明らかだし。
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