やさしい先輩の、意地悪な言葉
それに……神崎さんのことが気になり始めたばかりでもあるから、隆也を怒らせてしまった理由ーー神崎さんへのこの気持ちもまだ神崎さんには言えない。


だから私はただただ泣くだけだったのだけれど、神崎さんは、


ぽんぽんと、


私の頭を撫でてくれた。

無理に理由を聞き出さないそのやさしさと、頭を撫でてくれるその右手が、とても温かかった。



いつまでも泣いてるわけにはいかない。
私は極力すぐに涙を引っ込め、帰ることにし、これから会社に戻る神崎さんと改札までいっしょに向かった。
神崎さんは「家まで送ろうか?」と言ってくれたけど、「大丈夫です」と答え、神崎さんとは改札で別れ、お互いべつのホームへ向かった。



もし駅で神崎さんに会わなかったら、その夜は隆也のことが怖くて寝られなかったかもしれない。
だけど、神崎さんの温かさを感じられたから、私は心を落ち着かせて眠ることができた。
< 99 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop