強気な彼から逃げられません
憮然とした顔で私を見つめながら、隠すこともないため息とともに怜さんの言葉が続く。
「たまに駅で見かけるようになってからは、一年くらい経ってるし。 偶然同じ電車に乗り合わせた時とか、会社の受付に座ってる時の顔とか。
がっかりするどころかますます気持ちは盛り上がってるんだけど」
……確かに私、受付嬢ですけど。
え、それをどうして知ってるんだろう。
驚きで言葉を失った私をくすりと笑うと、怜さんはそれまでにない子供のような目を私に向けた。
してやったり、とでもいうような、にやりとした視線。
「俺の事、やっぱり眼中になかったんだな。それなりに女には人気があるのにちょっと自信なくすよ」
はあ、と大きく息を吐きつつも、それほどショックを受けているようには見えないし、どこか機嫌が良さそうに感じる。
「お前の会社の顧問をしている弁護士事務所で働いてるんだよ、俺。 時々といっても年に数回法務部に寄るくらいだけど。
で、その時に俺たちは会ってるんだけど?」
「う、嘘。……ごめんなさい、覚えてない」